医薬品の肝動態は全身的な体内動態に対する影響が大きい。また、肝毒性は致命的な副作用となる可能性が高く、その把握が必要とされる。多くの医薬品の肝移行は輸送体(トランスポーター)が関与するため、そのメカニズム解明に基づいた予測法の樹立が望まれている。しかし、生理的化合物の肝動態は動物種間で共通した機構で進行する場合が多いが、薬物など生体異物の肝動態における種差は稀ではない。そこで本研究は、複数のサブタイプの存在が分子的に明確になってきた有機アニオン輸送体について、動物とヒトとの比較・外挿を行う研究である。 胆汁中移行性・肝動態が多様な一連の化合物としてナフシリンのようなβ-ラクタム抗生物質を用いた。実験動物として一般的なラットにおける肝動態の解析を行なった。遊離肝細胞、トランスポーター発現培養細胞、全身動態解析等を組み合わせた解析結果として、ラットではOatp1a4が主要な寄与をし、Oatp1a1やOatp1b2の寄与は小さかった。このようなOatp1a4を介した肝取り込みは他のβ-ラクタム抗生物質誘導体においても観測された。特にナフシリンにおいてはその寄与率は90%程度と高いものであった。これに対応するヒトOATPの解析を行なった。その結果、OATP1B3が50%程度と最も寄与率が高かったが、OATP1B1の寄与も30%程度であった。アミノ酸配列的にはラットOatp1a4とヒトOATP1B3は高くなく、種間での対応付けのためには輸送体の構造のみならず機能的側面の解析を含める必要のあることが明らかになった。 このような種間対応付けは一連の化合物ごとに一定の傾向が示されると考えられ、今後の肝動態の種差を克服するためには、対応付けを機能的に行なう必要性を示すことに成功した。これらの成果は今後の医薬品開発に活用できる情報になると期待できる。
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