研究概要 |
昨年度までの研究により、Huh7, HepG2などの培養肝細胞では、プロテアソーム阻害、多価不飽和脂肪酸投与などの操作により、小胞体内腔に脂質付加されたApoB (pre-VLDL)が蓄積し、脂質滴と扁平なER槽の融合構造(ApoB-crescent)が形成されることが明らかとなった。 本年度はApoB-crescentの形成に影響を与える因子を探索し、以下の結果を得た。(1)Brefeldin A(BFA)など分泌経路を阻害する薬剤を作用させるとApoB-crescentが増加すること、(2)ごく低濃度のBFAを作用させ、ApoB, albumin, fransferrinなどの分泌やゴルジ装置の形状には影響がない場合にも、ApoB-crescentの形成が誘導されること、(3)BFAの作用の一つであるADP-リボシル化をMIBGなどの薬剤で阻害すると、ApoB-crescentの新規形成が完全に阻止され、また既存のApoB-crescentも短時間のうちに解消すること、(4)BFAによるADP-リボシル化の基質となるBARS3 (CtBP)の過剰発現により、ApoB-crescentが減少すること。これらの結果はADP-リボシル化が脂肪滴と小胞体の相互関係に影響を与えることを示し、BARS3が関与する可能性を示唆した。また小胞輸送の研究に頻用されているBFAが脂肪滴にも変化をもたらすことが示された。
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