研究課題/領域番号 |
19390050
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩田 浩平 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (80109529)
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研究分担者 |
石橋 誠 京都大学, 医学研究科, 教授 (30232341)
滝川 俊也 京都大学, 医学研究科, 助教 (90263095)
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キーワード | 中枢系神経 / 形態形成 / 遺伝子 / 外因 / エタノール / 全前脳胞症 |
研究概要 |
(1)Sonic hedgehog(Shh)遺伝子の発現を特異的に阻害した遺伝子改変マウス(コンディショナルノックアウトマウス)を作成し、その表現形解析を行なったところ、Shh遺伝子の発現異常によって胎児大脳の神経前駆細胞の増殖と分化が障害され、大脳皮質の層構造の形成が阻害されて大脳の低形成となることが明らかになった。従来、Shhは神経管の腹側化に重要な分子であるとされてきたが、この結果は終脳の背側の形成と大脳皮質の層形成にもShh分子の働きが重要であることを示す新知見である。 (2)全前脳胞症(holoprosencephaly,HPE)は、発生初期における前脳の分割不全を主徴とする頭部顔面の発生異常である。妊娠7日のC57BL/6J妊娠マウスにエタノールを腹腔内に2回分割投与することによってエタノール誘発HPEマウスモデルを確立し、その異常発生機序を調べた。エタノール投与群胎児の約30%に頭部顔面異常が誘発され、多様なHPEの表現型を含んでいた.正中部における終脳及び間脳の発生分化が特に強く障害され、組織学的にも、単脳室、眼球欠損、網膜組織の異形成、交連線維の形成不全、切歯の欠損などが観察された。脳の初期発生に関与しヒトのHPEの原因遺伝子の一つとして知られているShhとその標的遺伝子であるNkx2.1の発現が、エタノール投与群の胚の脳原基、脊索前板、脊索などで有意に低下しており、マウス頭部正中部におけるShh signalingの抑制がエタノール誘発HPEの一因であると考えられた。
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