研究課題/領域番号 |
19390050
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩田 浩平 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (80109529)
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研究分担者 |
石橋 誠 京都大学, 医学研究科, 教授 (30232341)
滝川 俊也 京都大学, 医学研究科, 助教 (90263095)
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キーワード | 脳 / 形態形成 / 遺伝子 / 環境要因 / 発生異常 |
研究概要 |
(1)7体節期マウス胚の間脳と中脳に線維芽細胞増殖因子15(Fgf15)が発現する.我々は昨年までの研究によって、これらの部位でFgf15が発現するためには、転写活性化因子Gli蛋白を介したSonic hedgehog(Shh)シグナリングが必要であることを明らかにした.Fgf15発現ドメインはGli2のそれとオーバーラップし、Gli結合部位(GliBs)はFgf15遺伝子のエンハンサー/プロモータ領域にある.今年度の研究によって、2つのGli応答エレメント(GliRE)を同定し、クロマチン免疫沈降アッセイによってGli2が直接GliREに結合することを明らかにした.さらに、ルシフェラーゼアッセイによって、活性型Gli2がGliBsに、抑制型Gli2がGliREに結合することがわかった。以上の結果から、抑制型Gli2がGliREに結合することによってFgf15の発現を制御していることが明らかになった. (2)妊娠初期のエタノール曝露による全前脳胞症(holoprosencephaly ; HPE)の発現機序を明らかにするため、妊娠7日のC57BL/6Jマウスにエタノールを腹腔内投与し、妊娠10日に胎児を取り出してShh遺伝子の発現とShhシグナルのアンタゴニストであるprotein kinase A(PKA)の活性化を調べた.その結果、エタノール処理群の胎児の脊索前中内胚葉(PME)において、Shhの発現が抑制されPKAが活性化されていることが明らかにかった.また、抗酸化作用をもつビタミンC,Eでマウス胚を前処理すると、PMEの細胞死が抑制され、HPEの発症も減少した.この結果から、妊娠初期のエタノールは、PKAを活性化することによってShhの発現を抑制しHPEを誘発すること、およびその病理発生過程に細胞死が関与していることが明らかになった.
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