研究概要 |
前年度のゼブラフィッシュのパネキシン相同遺伝子群の配列決定に予定以上の時間を要したので、並行してZ-Panx1/2/3の時空間分布を調べるための抗Z-Panx1/2/3抗体を作成した。C末端領域後半のスプライシング誤情報があったため、その正確な配列の決定を待たず、Z-Panx1/2/3のN末端に対する抗ペプチド抗体を作成した。得られた抗血清はELISAで非常に高い力価を示したので、これを用いて免疫組織化学を行った。ステージは本課題の目的「心臓の協調拍動の確立」に集中すべく、発生胚の心臓器官形成開始時期(12hpf)、心臓の拍動開始時期(24hpf)とした。 その結果、Z-Panx1/3は胚全体に非常に弱い発現しか認められないのに対し、Z-Panx2は24hpfで心臓に極めて強く発現していることがわかった。また12hpfではほとんど発現していない。これは既に同定された心臓の分化や機能発現に関与する遺伝子群(特に転写因子群、BMP2,Nkx2.5,GATA4,FGF8等)が早いもので分裂開始時期(0.75hpf)、遅いものでも体節形成時(10hpf)から発現していることと好対照である。これはZ-Panx2が形成された心臓の機能発現(拍動の開始や協調拍動の確立)に関与することを示唆し、我々の当初の研究目的に大変よく合致することが判明した。配列の高い相同性から、哺乳類においてもPanx2が心臓で何らかの機能を果たしていることが予想される。 遺伝子発現抑制に使用されるmorpholinoは、一般的に5'側非翻訳領域に対応するものが最も効果が高い。我々はZ-Panx2の5'側の配列情報を既に得ており、受精卵への注入によりZ-Panx2の発現抑制が可能となった。またそれ以前のステージでPanx2の発現が検出されないので、心臓機能への効果を直接検出することが可能となった。
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