本研究は、アジュバント(FIA)による良性リンパ管腫形成に伴う腹腔内での脂肪や物質の動態変化を追跡しながら脂肪細胞とリンパ管内皮との連関性を検証することを目的とする。本年度は; 1)リンパ管腫形成に伴う局所変化の形態的・機能的解析、2)脂肪や物質の動態とリンパ管腫の選択的吸収機能の解析、3)リンパ管内皮細胞と脂肪細胞との連関性の検索、を行った。 FIAの投与回数が多いほど、リンパ管腫形成はより強くなり、腹腔からの物質の移動が障害された。ところが、腫瘍表面の特定部位では蛍光ビーズなどの異物が盛んに集積・吸収されており、異物の除去のための何らかの排導機構の存在が示唆された。一方、リンパ管腫全体では盛んにFIAを摂取して脂肪細胞様に化生し、さらには細胞同士が次第に融合・連結してリンパ管様構造が形成され、脂肪滴や脂肪摂取細胞がこの中に侵入しながら腹壁や横隔膜の筋層内を排導していた。さらにFIAを3〜4回投与した動物では、ついに腹壁を貫通して腹壁表面の皮下組織内に脂肪含有細胞として出現することが確認された。次に、腹腔内脂肪や皮下脂肪への摂食脂肪の大量蓄積は、リンパ管腫の誘導にはほとんど影響が認められなかった。逆に、リンパ管腫発症動物においては皮下脂肪組織への脂肪の摂取・沈着が阻害されているものの、腹腔内脂肪への脂肪沈着は有意の変化はなかった。また、GFP陽性骨髄細胞の移植実験の結果、FIA誘導後約1ヶ月半でこの腫瘍が骨髄由来の細胞で置き換えられることが確認できた。 以上から、本リンパ管腫では腹腔からの物質移動障害を来す反面、異物であるFIA成分の排導を積極的に行うために腹膜中皮や骨髄由来の間葉系細胞が一種の脂肪(含有)細胞へと化生し、リンパ管様の形態と機能を持つようになったものと考えられる。今後、この脂肪摂取細胞と本来の脂肪細胞との関連性をさらに検討して行きたい。
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