研究課題
本研究では、統合失調症やパーキンソン病などのドーパミン関連神経精神疾患の動物モデルを作製し、その病態生理・病因に組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)-プラスミンシグナルが関与しているかどうか検討する。さらに、神経精神疾患に対する治療薬の効果や副作用にtPAが関与しているかどうかについても検討し、tPA関連分子を標的とした新しい神経精神疾患治療薬の薬理学的コンセプトの確立を目指す。平成21年度は、前頭葉皮質のドーパミンが長期記憶に重要な役割を果たしていることから、長期記憶における前頭葉皮質のtPAの役割について行動薬理学的および神経化学的に解析し、認知症との関連性を検討した。1.ドーパミンD1受容体アゴニストSKF38393の投与により、マウス前頭葉皮質において長期記憶形成およびタンパク合成に重要なシグナルタンパクERK1/2のリン酸化が用量依存的に増加した。2.SKF38393の投与により、マウス前頭葉皮質におけるtPAのタンパク発現が増加した。3.tPA遺伝子欠損マウスでは、新奇物体認知試験における認知記憶に障害が認められた。4.tPAと同様に、細胞外マトリックス分解活性を有する分泌型の亜鉛要求性マトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の遺伝子欠損マウスにおいても、認知記憶障害が認められた。以上の結果より、前頭葉皮質におけるERK1/2の活性化およびtPAの合成にはドーパミンD1受容体が関与していることが示唆された。さらに、前頭葉皮質における細胞外マトリックスの再構成が長期記憶に重要な役割を果たしている可能性が考えられる。
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