研究課題/領域番号 |
19390064
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 尚亮 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (60178499)
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研究分担者 |
上山 健彦 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 講師 (80346254)
白井 康仁 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 准教授 (60263399)
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キーワード | プロテインキナーゼC / 脊髄小脳変性症 / 神経変性 / カルシウム / 遺伝子変異 |
研究概要 |
脊髄小脳変性症(SCA)14型はPKCγのアミノ酸変異によって引き起こされる優勢遺伝型の神経変性症である。我々は、これらの変異がPKCγの酵素学的機能にもたらす影響を検討した。野生型PKCγ発現細胞では、非発現細胞に比べ、刺激後、一過性に上昇した細胞内Ca^<2+>は酵素活性依存的に速やかに減少する。一方、SCA14変異体は、in vitro活性測定において高い酵素活性能を有したが、細胞外からのCa^<2+>流入時間は延長したままであった。このCa^<2+>流入にはTRPCチャネルの関与が考えられたため、TRPC3チャネルを基質としてin vivo酵素活性測定を行った結果、野生型PKCγはチャネルをリン酸化するのに対し、変異体では有意なリン酸化は確認できなかった。そこで、全反射顕微鏡を用いて、PKCγの一分子における細胞質膜上での動態を観察したところ、変異体の膜滞在時間が野生型に比べて有意に短縮していた。これらの結果より、野生型PKCγでは刺激後、TRPCチャネルをリン酸化し、細胞外からのCa^<2+>流入を止めるのに対して、変異体は細胞膜に十分な時間存在できないため、チャネルのリン酸化ができず、細胞内のCa^<2+>濃度を適切に調節できないと考えられた。このような過剰なCa^<2+>流入がSCA14において神経細胞死を引き起こす1つの原因になっている可能性が示唆された。また、PKCγのトランスロケーションについて、免疫電顕法を駆使して検討した。その結果、光学顕微鏡では一見同じと思われたPKCのトランスロケーションも、電子顕微鏡で観察すると、Ca^<2+>のみによる刺激によるPKCの活性化は、受容体刺激による活性化と異なり、細胞膜とり十分な結合が得られないことを示している。この事実は、上記のSCA14発症機構を裏付けた。
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