研究課題
これまでに申請者は、慢性落痛下においてopioidを使用した場合、精神依存形成が抑制されることを明らかにしており、これには、腹側被蓋野のμ-opioid受容体の機能低下が一部関与していることを見い出している。この慢性疼痛下における腹側被蓋野のμ-opioid受容体機能低下は、持続的な疼痛刺激に伴う内因性opioid peptideの持続的な遊離に起因する可能性が考えられた。そこで、本研究では、疼痛下におけるopioid精神依存不形成機構における内因性opioid peptideの役割について検討を行った。始めに、morphineにより誘発される報酬効果に対する脊髄PKC活性化の影響とβ-endorphinの役割について、β-endorphin knockoutマウスを用いて検討を行った。その結果、wild-typeマウスにPKCの活性化薬であるphorbol12,13-dibutyrate(PDBu)を髄腔内投与したところ、morphine誘発報酬効果の抑制が認められた。一方、β-endorphin knockoutマウスにおいても同様の検討を行ったところ、β-endorphin knockoutマウスではPDBuの髄腔内投与によるmorphine誘発報酬効果の抑制は認められなかった。これらのことから、β-endorphinは脊髄PKCの活性化によるmorphine精神依存不形成機構において、重要な役割を担っていることが明らかとなった。次に、神経障害性疼痛下におけるmorphineの精神依存形成に重要な役割を担っている中脳辺縁ドパミン神経の変化について解剖学的な検討を行った。その結果、坐骨神経を結紮することにより、腹側被蓋野においてドパミン神経の活性化の指標となるリン酸化tyrosine hydroxylase免疫活性の著明な減弱が認められた。さらにこの現象は、側坐核に投射している神経細胞上で認められたことから、神経障害性疼痛により腹側被蓋野から側坐核に投射しているドパミン神経の活性低下が引き起こされていることが明らかとなった。以上、本研究の結果より、持続的な痛み刺激により、腹側被蓋野においてβ-endorphinが持続的に遊離した結果、μ-opioid受容体の機能低下、さらにはそれに続くdopamine神経の活性低下が引き起こされていることが明らかとなった。こうした変化が、神経障害性疼痛によるopioid精神依存不形成機構の一因である可能性が示唆された。
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