研究概要 |
NMDA受容体は,刺激に応じて細胞内にCa2+イオンを流入させ様々な細胞内シグナル伝達経路を活性化する。申請者はNMDA受容体機能の調節機構の一つにチロシンリン酸化による制御を提唱している。19年度には,Src型キナーゼによるNR2A,及びNR2Bのリン酸化の意義を追求し,以下の結果を得た。【NR2A】(1)NR2Aの主要なリン酸化残基であるTyr-1325をフェニルアラニンに置換したY1325F改変マウスの作製を完了し,C57BL6の系統にバッククロスを行った。(2)Y1325F改変マウスの行動実験を一部分開始した。その結果,tail suspension test及び,強制水泳試験において,Y1325F改変マウスに抗欝様行動が観察された。(3)HEK293細胞を使った再構成系を用いて,Tyr-1325のリン酸化がsrc型キナーゼによるNMDA受容体チャネル活性の増強に必須であることを示した。その他の残基のリン酸化はチャネル活性の制御には関与していないことも見出した。(4)Tyr-1325のリン酸化を特異的に認識するリン酸化抗体を作製し,それを用いて,Tyr-1325は海馬,線条体で強くリン酸化されていることを見出した。以上の解析から,NR2AのTyr-1325のリン酸化はNMDA受容体チャネルのチャネル活性を制御することによって,マウス個体の行動を制御していることが明らかになった。【NR2B】すでに作製と初期の解析が完了しているNR2B-Y1472F改変マウスでは,NMDA受容体の局在異常など様々な表現型が観察されている。その分子基盤の解析を目的として,野生型及び,Y1472T改変マウスのNMDA受容体複合体を精製し,2D-DIGEの手法で-つ-つの構成分子の比較を開始した。-actinin2などの分子に関して,野生型マウスとY1472F改変マウスで差異が見られた。
|