Passeriformesに属する鳥類(songbird)は、音節で構成されるステレオタイプな音声を正確に繰り返す。この音声は、成鳥の音声を聴いて記憶する時期(感覚期)、記憶した成鳥の音声を模倣する時期(感覚運動期)を経て、後天的に獲得される。songbirdの中枢神経系には、発声器官を制御する運動系神経回路が発達しており、song systemと呼ばれる。近年の研究からsong systemが哺乳類の運動系を構成する大脳-基底核-視床と極めて相同な神経回路であることが明らかになってきた。哺乳類の大脳皮質運動野に相当するsong systemの大脳運動領域の投射ニューロンは、発声時にミリ秒精度の正確なタイミングで制御されたスパイク活動を示し、それぞれのスパイク活動が特定の音節と厳密に対応する。本研究では、song systemの極めて精緻なスパイク活動パターンが学習ステップのどのような調節機構によって獲得され、獲得された歌がどのような調節機構で維持されるか明らかにすることを目的として研究を進めている。 平成19年度は本研究の遂行に必要な技術開発を行った。まず発声時のsong systemの神経活動を測定するために、マイクロドライブの開発を行った。マイクロドライブの総重量が1グラムと軽量で、小型ステッピングモータにより電極のポジションを100ナノメートルの精度で遠隔制御可能であるため、songbirdの発声行動を妨げること無く安定した神経機能計測が可能になった。さらに、鳥類の脳に効率よく遺伝子導入できるように、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノアソシエイトウイルスをペースとしたウイルスベクターの改良を行った。
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