研究概要 |
・ これまでの研究で骨髄間葉系細胞にNotch Intracellular Domain(NICD)を導入し、サイトカイン刺激をすると神経細胞に分化すること、また誘導順序を逆にしてサイトカインで刺激しNICDを導入すると骨格筋が誘導されることを見出した。この間葉系幹細胞の分化転換機構をNICDの果たす役割から検証した。 ・ 骨髄間質細胞にNICDを導入すると、神経前駆細胞へ分化する。そこで、様々な各種阻害剤を加えて、分化への影響を検討した結果、NICDはMEK1/2シグナル系を主体として作用をしている可能性が示唆された。 ・ ラットおよびヒトの骨髄間葉系細胞にNICDを導入し、その前後におけるDNA microarrayを行い、signal pathway解析を行った。その結果、誘導前の細胞で発現している未分化性に関わるGATA3, GATA4, GATA6, Foxo1AなどがNICD導入によって発現が消失し、逆にPARP, BRCA, STAT2などのpathwayが活性化されることがわかった。 ・ NICDの様々なdeletion mutantを作成し、トランスフェクションすることによって、神経細胞への分化転換に必要最小限のNotch細胞内領域を検索しところ、アンキリン・リピート領域に強い神経と筋肉の誘導活性があることが示唆された。これは、NICDによってもたらされる神経細胞誘導が、従来言われている核における転写制御作用によるものではないことを示唆しており、大きな所見である。また、アンキリン・リピートとGFPとの融合蛋白質の発現ベクターも作成したが、これをトランスフェクションしてもやはり同様の高効率で神経細胞へと分化させうることが確認できた。 ・ 骨髄間質細胞へAnkyrin-FLAGを導入し免疫沈降を行うことによって、アンキリン・リピートと相互作用する蛋白質を同定したところconventional Notch pathwayに関連するもの以外の分子と結合することが分かった。 ・ このことから骨髄間葉系細胞での分化転換にはconventional pathwayとは別の経路で誘導が起きていることが強く示唆された。
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