研究概要 |
本研究では,2つのアクチン重合端生成制御について新知見が得られた.1つはアクチン脱重合因子による線維切断に関するものである.以前,われわれは細胞内蛍光単分子イメージングにより,葉状仮足内のアクチン重合端阻害分子,キャッピングプロテインが1.2秒の半減期で高頻度に脱キャップされることが見出し,高頻度線維切断-再結合仮説を提唱した(ジャーナルオブセルバイオロジー誌2006年発表).この仮説検証のため,アクチン脱重合因子コフィリンのコファクターであるAIP1を解析した.まず,AIP1がコフィリンによる線維切断に依存して線維断端に結合することを細胞内で実証した.更に,その分子動態から細胞伸展縁にある葉状仮足では毎秒280アクチン分子長の線維に1回,AIP1を介する切断が起きる結果を得た.これはこれまで主要と考えられてきたArp2/3複合体によるアクチン重合核形成より15倍の頻度であり,アクチン切断点から盛んな線維伸張が起きることを定量的に解明した(プロスワン誌発表).これと関連して,フォルミン蛋白質の1つmDia1が細胞内アクチン単量体増加にトリガーされ,アクチン重合核を形成しプロセッシブに線維伸長させる急性アクチン線維修復機構を見出した.重要なことに,その重合活性が高い細胞内部位は上記AIP1を介するアクチン崩壊が盛んな部位と局在が一致した.線維崩壊が単量体アクチンの濃度不均一性を細胞内に作り,特定分子を活性化することで再重合を亢進させるフィードバック機構を発見したと考えている(ジャーナルオブセルサイエンス誌発表).
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