研究概要 |
ストレス応答MAPK情報伝達経路は,様々な環境ストレス刺激によって活性化され,細胞周期停止やアポトーシスに代表される細胞のストレス応答の制御に中心的な役割を果たしている。またこの経路はサイトカインや抗原刺激によっても活性化され,炎症や免疫応答の調節にも極めて重要である。近年,ストレス応答経路の制御異常が癌や免疫疾患の発症に深く関与する証拠が蓄積されているが,この経路の活性制御機構や疾患における制御異常に関しては不明な点が多い。本研究では,申請者自身がクローニングしたストレス応答MAPKKK,MTK1の活性化機構を解明すると共に,その生理機能の解明を行った。 まずMTK1の活性化機構として,N末端とC末端の抑制的相互作用の解除,Coiled-coilドメインを介した2量体化,およびtrans自己リン酸化が必要であることを明らかにした。さらにMTK1活性化に必須の自己リン酸化サイトを同定して,同部位に対するリン酸化特異抗体を樹立し,MTK1活性をウエスタンブロットにより簡便にモニターする方法を確立した。この抗体を用いて検討を行い,MTK1がDNA損傷など様々なストレス刺激によって強く活性化されることを見出した。また,RNAiを用いたノックダウン実験により,MTK1が特定の刺激の際には,p38/JNK経路活性化の主要なメディエイターとして機能することを確認した。さらにMTK1ノックダウン細胞を利用して解析を行い,MTKIが増殖制御,アポトーシス及び炎症性サイトカイン産生に重要な役割を果たすことを見出した。また,MTKIと複合体を形成する新たな分子としてRACK1を単離し,RACK1がMTK1の活性化を促進するエンハンサーであることを明らかにした。さらに低酸素環境下ではRACK1がストレス顆粒内に取り込まれ,MTK1活性が阻害されるという新たなMTK1活性調節機構を見出した
|