研究課題/領域番号 |
19390084
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 博 金沢大学, がん研究所, 教授 (00115239)
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研究分担者 |
滝野 隆久 金沢大学, がん研究所, 准教授 (40322119)
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キーワード | MT1-MMP / MMP-2 / TIMP-2 / 活性化 / 組織破壊 / GDF15 / p53 / p21 |
研究概要 |
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とりわけ我々が同定した膜型MMP(MT1-MMP)は炎症性疾患、がんの浸潤・転移などの病態のみならず管腔形成など組織形態形成過程などに重要な役割を果たすが、未だ基質特異性など不明の点が多い。今回、我々はこれまでの発現クローニング法を改良して、新規基質としてTGFβファミリーのGrowth Differentiation factor 15 (GDF15)を同定した。GDF15はがん抑制遺伝子産物p53の活性化、p21遺伝子発現誘導を介してがん細胞の増殖を抑制するが、MT1-MMPによるGDF15の切断・分解はDF15によるがん細胞の増殖抑制を解除することを示した。 また、MT1-MMPの活性は大別してTIMP-2を介したMMP-2の活性化と直接的な基質切断に分かれるが、各々がいかなる状況でどのような機能を果たしているか不明であった。我々はTIMP-2を細胞表面に局在させMMP-2前駆体の受容体として機能する人工的なキメラタンパクMSP-TIMP-2の作成に成功し、この分子を用いてMT1-MMP機能の解析を行った。その結果、MT1-MMPの機能はTIMP-2濃度により決定されていることが明らかとなった。すなわちMMP-2活性化が起こる条件下ではMT1-MMPの大半はTIMP-2と結合して受容体として機能しているためMT1-MMPによる直接的な基質切断は起こらないことを示した。さらにASP-TIMP-2をMTI-MMP発現レベルが低くMMP-2活性化が起こらないU87MG細胞に発現させることにより、MMP-2活性化が誘導され、タンパク分解活性が劇的に向上した結果U87MG細胞の転移能が向上することを実験的に示した。すなわち、正常上皮細胞などによる形態形成にはMT1-MMPによる制御された細胞外マトリックスの分解が、がん細胞による組織破壊を伴う浸潤性の増殖にはMMP-2活性化が主に関わる二とが強く示唆された。
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