1. 分泌型RAGE過剰発現マスの解析 既に製作済みの、esRAGE過剰発現トランスジェニックマウス(Tg)に^<125>I標識アミロイドβ_<1-42>を静脈内投与して組織分布を調べると、野生型マウスに比しesRAGE TgとRAGE欠損マウスで脳移行が抑制されることが見出された。この結果は、脳血液関門におけるアミロイドβの取り込みに膜型RAGEが関与しており、esRAGEはアルツハイマー病に対する防御因子となりうることを示す。(Sugihara et al.Alzheimer Disease投稿準備中) 2. 膜型RAGE cDNAノックインマウスの解析 a. 既に製作済みの分泌型RAGEを発現しないマウス膜型RAGE cDNAノックインマウスについて解析した結果、顕著な表現型の異常は見られなかった。 b. 比較予定のモデルマウスと遺伝的バックグラウンドを揃える必要があるため所定の期限内には糖尿病腎症の解析に至らなかった。 3. 本研究に関連して見出された新たな知見 a. 本研究の経過中、グラム陰性細菌細胞壁外膜の構成成分であるリポ多糖がRAGEのリガンドであり、RAGEは敗血症ショックにも関わっていることが見出された(Yamamoto et al.J.Immunology 2011)。 b. さらに、東北大学久保裕司博士のグループとの共同研究により、フォスファチジルセリンもRAGEのリガンドであり、RAGEはアポトーシス細胞の貪食にも関わっていることがはじめて見出された(He et al.EMBO Reports 2011)。 以上、本研究により、RAGEは糖尿病合併症のみならずアルツハイマー病、炎症、自然免疫、アポトーシスなど広汎な病態に関わるpattern recognition receptorであることが明らかにされた。
|