糖脂質糖鎖の合成酵素ノックアウト(KO)マウス群を用いて、糖脂質糖鎖の生体内機能、特に脂質ラフトの構造と機能維持メカニズムにつき検討した。 1.GM2/GD2合成酵素KOマウスとGD3合成酵素KOマウスを交配して作成したダブルKOマウスの表現型と病理組織織学的異常につき明らかにした。早期より振戦、歩行異常、抗うつ反応などの異常を認めた。 2.2種の単独KOマウスおよびダブルKOマウスの脳より膜画分を分離し、ショ糖密度勾配超遠心によりタンパク質の分画を行った。各分画におけるラフトマーカー及びGPIアンカーダブルノックアウトでは著明なフロチリン、CD55などのラフトからの放散が認められた。 3.DNAアレイにより、ダブルKOマウスの小脳と脊髄での遺伝子発現profileを比較検討した。その結果、補体系遺伝子の全般的な発現亢進を認めた。しかし産物のタンパクレベルは正常又は減少する場合もみられた。また炎症性サイトカイン遺伝子の発現レベルも亢進し、そのタンパク質産物の上昇も確認された。組織的検討においても、DKOのラフトでは、マーカー分子の局在が曖昧となり、ラフトの構造の基本的骨格が崩壊していることが示唆された。 4.ダブルKOマウスで発現が低下している遺伝子としてNinj2が同定されたので、その発現ベクターを作成し、オリゴデンドロサイト細胞株に導入して細胞のstress耐性などを検討中である。また、Ninj2が相互に結合して、陽性細胞同士が凝集することを確認した。
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