炎症が癌の血管新生と悪性化を促進する分子機構-がん微小環境の重要性

2008 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19390089
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 小野 真弓 九州大学, 薬学研究院, 客員教授 (80128347)
• キーワード: 炎症 / 血管新生 / リンパ管新生 / がん微小環境 / がん / 腫瘍関連マクロファージ / マクロファージ標的薬 / がん間質

研究概要

がんの発症や悪性進展に、がんの微小環境や間質の炎症応答が重要な鍵をにぎっている。我々は間質の血管新生やリンパ管新生に注目しがん関連マクロファージを中心に新しい診断・治療のバイオマーカーの探索研究を進めている。特に、
1、炎症反応に応答して誘導されるリンパ管新生に活性化マクロファージの浸潤とマクロファージから産生されるVEGF-CやVEGF-Dが深く関与していた。
2、腫瘍関連のマクロファージを標的とした治療薬(リポソーム化クロドロネート)はマウスモデルでの血管新生やリンパ管新生やがんの骨転移を著明に阻害した。
3、転移抑制遺伝子であるNDRG1/Cap43は膵癌においてマクロファージや好中球のがんへの集積を制御することを明らかにした。現在、そのメカニズムについて検討している。
以上、がん間質の浸潤マクロファージのがんの悪性進展を膵癌細胞株やヒト膵癌の組織標本で促進する作用機序とそれらを制御する因子の役割を明らかにし、新しい診断治療の開発への基盤を確実なものにしつつある。がんの微小環境や間質の構築を対象とした研究は、がんだけでなく炎症が関与する他疾病の病態の把握や診断、治療の創出にむけて貢献できると確信している。

研究成果

• [雑誌論文] NDRG1/Cap43 play an essential role in tumor growth and angiogenesis suppression though the blockade of NF-κB signaling pathw ay by pancreatic cancer. (2009)
  • 著者名/発表者名: Hosoi, H., Izumi, H., Kawahara, A., Nakashima K., Murakami, Y., Tanaka, Y., Kinoshita, H., Koga, M., Nishio, K., Kohno, K., Kuwano, M., Ono, M.
  • 雑誌名: Cancer Res. (In press)
  • 査読あり
• [雑誌論文] Molecular links between tumor angiogenesis and inflammation : inflam matory stimuli of macrophages and cancer cells as targets for therapeut ic strategy (2008)
  • 著者名/発表者名: Ono, Mayumi
  • 雑誌名: Cancer Sci. 99 ページ: 1501-1506
  • 査読あり
• [雑誌論文] Role of macrophages in inflammatory lymphangiogenesis : Enhanced production of vascular endothelial growth factor C and D through NF-kappaB activation. (2008)
  • 著者名/発表者名: Watari, K. Nakao, S., Fotovati, A., Basaki, Y., Hosoi, F., Bereczky, B., Higuchi, R., Miyamoto. T., Kuwano., Mayumi, Ono M. Role of macrophagesa
  • 雑誌名: Biochem. and Biophys. Res Commun. 377 ページ: 826-831
  • 査読あり
• [学会発表] がんの血管新生とリンパ管新生におけるNF-_KBシグナルの役割. (2008)
  • 著者名/発表者名: 渡公祐, 細井文仁, 村上雄一, 馬崎雄二, 宮本智文, 桑野信彦, 小野眞弓
  • 学会等名: 第6 7回日本癌学会学術総会
  • 発表場所: 名古屋国際会議場
  • 年月日: 20081028-20081030