研究課題
我々の身体の中で最も大きなネットワーク形成が血管新生やリンパ管新生などの脈管形成である。がんをはじめとして炎症、虚血、感染症、免疫疾病などの病気に観察される。疾病と関連する脈管新生はしばしば調節制御から逸脱して誘導されることも知られている。炎症や感染症とがん発症や進展が密接に関連することは、1863年ウィルヒョー博士が"Lymphoreticular infiltrate reflects origin of cancer at sites of chronic inflammtion"と論文中に述べている。炎症とがんを結び付ける1つの間質応答として炎症性の血管新生の関与が挙げられる。特にがん間質細胞(マクロファージや線維芽細胞を含む)や血管/リンパ管新生ががんの悪性進展に関与する研究は最近多大な注目を集めている。我々はがんの血管新生におけるマクロファージや好中球などの浸潤と役割の機構を明らかにし、血管新生の悪性進展とその病態の新しい観点による研究を進めている。特に、1. 正常組織より採取した単球/マクロファージと腫瘍内に浸潤してきた腫瘍関連マクロファージでの様々な因子の発現を確認したところ、MCP-1などのケモカインや炎症性サイトカインであるIL-1αや血管内皮細胞増殖因子であるVEGF-Aなどの発現が上昇していた。2. 転移抑制遺伝子であるNDRG1/Cap43は膵癌においてマクロファージや好中球のがんへの集積を制御することを明らかにした。さらにその抑制機構にはNF-κBシグナルを介したケモカインの発現制御が関与していた。以上、がん間質の浸潤マクロファージのがんの悪性進展を膵癌細胞やヒト膵癌の組織標本で促進する作用機序とそれらを制御する因子の役割を明らかにし、新しい診断治療の開発への基盤を確実なものにしつつある。がんの微小環境や間質の構築を対象とした研究は、がんだけでなく炎症が関与する他疾病の病態の把握や診断、治療の創出にむけて貢献できると確信している。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (18件)
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