本研究は21世紀成人病医療の最重要課題である、メタボリックシンドロームの最終標的である心血管病変の病因解明、新規治療法開発を最終目標とする。そのため、メタボリックシンドロームの際に代謝経路から放出されるフリーラジカルやガス分子等の反応性低分子に着目して、これらによる蛋白質翻訳後修飾生成機序と、その標的蛋白質を検索して、心血管病進展の病因と新たな治療分子標的の同定を行う。最終年度は、メタボリックシンドロームの代表的モデルであるZucker Ratの血管病と蛋白質翻訳後修飾に加え、血管メタボローム解析術、血管遺伝子解析も行い、以下のデータを蓄積した。1)Zucker Ratでは、血清中ホモシステインレベルが軽度上昇しており、チオール代謝の異常及びメチル化の異常が示唆された。これに加え、アルギニン代謝の異常と遺伝子会解析にてアルギナーゼ発現低下を認めた。2)生理学的検査より、血管内iNOSの発現により収縮力が低下していることが示唆された。3)プロテオミクス解析によりHSP60/70/90等血管内蛋白質メチル化の低下が検出された。また、iNOSの阻害により蛋白質メチル化が回復した。5)in vitroの検討ではインスリンシグナルに関連するPten/PP2Aがチオール酸化修飾を受ける事、一酸化炭素がインスリンシグナル増強とメチル化の増加に働く事が判明した。これらの所見により、メタボリックシンドロームにおける血管内代謝変化と蛋白質翻訳後修飾が血管病態やインスリン抵抗性に関与する事が示唆された。
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