研究課題
本年度は、胆管内乳頭状腫瘍intraductal papillary neoplasm of bile duct(IPN-B)の疾患概念を臨床病理学的に確立し、その発生・進展過程を膵pancreatic intraductal papillary mucinous neoplasm (IPM)および通常型胆管癌と比較した。(1) 外科的切除材料を用いた検討で、IPN-Bには、嚢状の拡張を示すもの、大量の粘液産生を示すもの、乳頭状増殖の目立つものがあることが明かとなり、臨床病理学的に複数な病態を呈することが明らかとなった。(2) IPN-Bは、通常型胆管型に較べ、外科的術後の予後が良好であり、またMUC2の発現が目立った。一方、通常型胆管癌ではMUC1の発現が目立ち、両者に粘液形質の発現の違いが見られ、発癌経路の違いが示唆された。(3) IPN-BとIPMT-Pに共通する臨床病理像、粘液形成/産生、細胞形質を検討した結果、IPN-BはIPMN-P、特に主膵管型のカウンターパートとしての特徴を示した。IPMN-Pの分枝型に相当する症例はIPN-Bでは殆どみられなかった。(4) IPN-Bの進展や浸潤能の獲得にはmatrix metallproteinase MMP-7の発現が重要であった。また、進展と伴に細胞接着因子であるβ-カテニンやE-カドヘリンの発現が低下し、これにより癌細胞の進展が促進されることが示唆された。
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