高値の血清CRPは心血管疾患との関連について、今まで不明であった。特に動脈硬化の発生におけるCRPの直接的な役割も解明されていない。本研究では、ヒトCRPを発現する2系統の遺伝子改変(Tg)ウサギの作製に成功した。CRPの発現は肝臓特異的であることをノーザンブロットで確認した。ELISAの解析により、血清CRPを測定したところ、Tgウサギの血清CRP濃度は0.4±0.13と57.8±20.6mg/dlであった。これはヒトの正常値と高値に相当していると思われる。また、これらのウサギから精製したCRPの補体活性を有していることが確認されている。従って、Tgウサギに発現しているヒトCRPが生理機能を発揮できると考えられる。2系統ウサギの血液検査ではすべて正常であり、ウサギの健康にCRPの影響はないと思われる。 動脈硬化の発生におけるCRPの作用を検証するため、2系統ウサギと同腹の正常ウサギに高脂肪食を16週間負荷させ、大動脈硬化並びに冠状動脈硬化の変化を検討した。正常ウサギと比べ、Tgウサギの高脂血症の程度、大動脈硬化病変の広がり、冠状動脈硬化の面積など、有意差が認められなかった。免疫染色並びにWestern blotによる病変でのCRPの発現を調べたところ、Tgウサギのほうが大量のCRPが病変に沈着していることが検出された。しかし、正常ウサギと比較して、動脈硬化の病変の増加が認められないことから、CRPは心血管病の要因でなく、単なる病態程度を表しているマーカーであることが示唆された。一方、血栓症におけるCRPの役割についてもBalloon-injuryモデルで検討したところ、Tgウサギの血栓形成は正常ウサギより有意に増加していることを認めた。従って、CRPは動脈硬化よりも血栓症の形成に関与していることが明らかにされた。
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