食道癌、胃癌のcancer stem cellのマーカーをSAGE法およびCAST法により同定しその特性を把握した上で、これらの癌に対する新しい治療感受性診断系を確立することを目的として、本年度は以下の通り実施した。 1)SAGE法による食道扁平上皮癌の網羅的遺伝子発現解析と特異的遺伝子の同定 食道扁平上皮癌より常法によりRNAを抽出し、10000tag以上のシークエンスを施行した。SAGEmapデータベースの正常食道ライブラリーとの比較から、食道癌で発現が亢進している遺伝子として、NUTF2、RYBPなどを同定した。 2)胃癌細胞株を用いたside population cellの分離・採取 共同研究により、胃癌細胞株MKN-28およびMKN-1のside population cellを準備した。 3)CAST法による胃癌細胞株の特異的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の同定 MKN-28およびMKN-1と正常胃粘膜から抽出したmRNAを材料にランダムプライマーを用いて逆転写反応を行い、pCAST vectorにライゲーション、その産物をコンピテントセルDH10Bに導入し、CASTライブラリーとした。このCASTライブラリーのアンピシリン含有LB培地陽性コロニーを回収、カナマイシン含有LB培養液培養陽性クローンについてb-ラクタマーゼ遺伝子のプライマーを用いてコロニーPCRを行い、インサートが200塩基以上のものについてシークエンスを行なった。これまでに、それぞれ500クローン以上の解析を終了し、DMKN、TMCO1、CALUなど多くの胃癌細胞に特異的に発現する遺伝子を同定した。 本年度に得られたデータを基盤として、最終年度となる来年度には、食道癌および胃癌のcancer stem cellのマーカーの同定についての解析を進めたい。
|