本研究は、がんの病態評価を可能とするゲノムマーカーを同定し、それらを利用した病態評価専用ミニアレイの開発を目的としている。初年度は、ゲノムマーカーの同定に主力をおいた研究を行った。本邦では最も高頻度に見られる胃がんを対象とした。手術によって採取された胃がん組織をmicrodissectionし、がん組織からゲノムDNAを抽出し、スクリーニングアレイを用いて、BACクローンのDNAコピー数解析を網羅的に行った。これらのゲノム情報と各症例の臨床病理学的情報(リンパ節転移の有無、腹膜播種の有無、肝転移の有無、壁進達度、組織型)との対比し、これらの病態を反映するBACクローンを同定した。精度を上げるために、データ解析には異なった2種類(決定木と有意差検定)の方法を用いた。 胃がん83例(男女比62/21、平均年齢70歳)のアレイCGH解析では、それぞれの方法で、25種類(リンパ節転移;6クローン、肝転移:4クローン、腹膜播種;4クローン、壁進達度;4クローン、組織型;7クローン、1クローンは重複)と25種類(リンパ節転移;7クローン、肝転移:6クローン、腹膜播種;5クローン、組織型;8クローン)の合計50種類のBACクローンが選別できた。また、高頻度、低頻度に異常を呈するクローンと内部対照をするクローン80種類選択した。これに基づいて、ミニアレイのレイアウト設計を行い、試作品の作成をチップメーカーに依頼し、実際の製造に至った。当初の予定に従った進捗状況となっている。ミニアレイ作成に利用した症例とは異なった胃がん症例で其の精度を検討するために、新規症例microdissectionを行い、DNAの抽出を行っている。
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