マイクロアレイ技術においては、すでに各種癌専用のミニチップの開発が進められているが、実用化されたチップはほとんどないのが現状である。本研究課題では胃癌の治療方針決定に有用な病態情報(リンパ節転移の有無、肝転移の有無、腹膜播種の有無、深達度(進行癌か早期癌か)、組織型)を提供できる胃癌専用のミニチップを作成し、その有用性を検討した。まずミニチップに使用するBACクローンを選択するために、外科的に切除された胃癌症例83例からDNAを抽出し、1440種類のBACクローンDNAをスポットしたDNAゲノムチップを使用してアレイCGH解析を行った。 アレイCGHから得られたDNAコピー数データと臨床病理所見を症例ごとに対比し、2種類の互いに独立した解析方法(有意差検定およびdecision-tree model classifier)を用いて各臨床病理パラメータと相関するBACクローンを50種類同定し(有意差検定で26クローン、decision-tree model classiffierで25クローン、どちらの方法でも選択されたものが1クローン)、これらにコントロールとしての88種類のBACクローンを加えた、138種類のBACクローンをスポットしたミニチップを作成した。 このミニチップの有用性を評価する目的で、新規30例の胃癌を用いて検討した。精度はリンパ節転移、肝転移、腹膜播種、深達度(進行癌か早期癌か)に対してはそれぞれ66.7%、86.7%、86.7%、96.7%であった。組織型については72.4%であった。以上より、我々の作成した胃癌専用ミニチップが治療方針決定に有用な病態情報を提供できることが示唆された。
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