研究課題
前立腺癌における発癌や進展メカニズムを明らかにすることを目的としてヒト前立腺におけるtransient amplifying(TA)細胞を分離、培養した。Senescence(老化)誘導とその回避機構を解析したところ、senescence状態ではjun familyのひとつで転写因子であるjunBの発現が有意に上昇し、p16, pRbの誘導を認める一方、これを回避するTA細胞ではjunB/p16/pRb発現が低下していた。siRNA遺伝子導入によってjunBをノックダウンすると、senescenceに至った細胞でも再び増殖活性を獲得することができた。以上から、junB発現の低下がTA細胞の腫瘍化シグナル、つまり前立腺の癌化を促進させる可能性が示唆された。次にヒト前立腺癌細胞株DU145を用いてjunB発現をノックダウンすると、p16発現は影響を受けないが、Matrix metalloproteinase 2誘導を介して癌細胞の浸潤能が有意に促進されることが分かった。ヒト前立腺全摘出標本を用いてjunBの発現profileを検討したところ、正常腺管では腺上皮ならびに基底細胞の核に一致して高発現するが、癌細胞では陽性率が有意に低下した。腺癌においてはGleason score(GS)6以下ならびにGS 3+4に比較して、GS 4+3, GS 8以上でjunB陽性率が有意に低下し、転移性前立腺癌ではjunB発現がほとんど認められなかった。以上のことから、junBは前立腺の癌化だけでなく前立腺癌の進展にも大きく影響すると考えられ、治療上の重要なターゲット分子となる可能性がある。さらに、生検や手術材料からjunB陽性率を検討することで、前立腺癌の悪性度や予後を予測することができると期待される(KonishiN., Shimada K et al. Clin Cancer Res, 2008)。
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