研究分担者 |
梅村 しのぶ 東海大学, 医学部, 准教授 (20276794)
竹腰 進 東海大学, 医学部, 准教授 (70216878)
梶原 博 東海大学, 医学部, 講師 (20317754)
木村 穣 東海大学, 医学部, 教授 (10146706)
寺本 明 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60231445)
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研究概要 |
Notchシグナル伝達は、細胞膜リガンドの刺激によりNotchレセプターの細胞内ドメインの核移行を起点とし、細胞増殖、分化、アポトーシス、癌化に機能することが知られている。これまでに、マウス下垂体において、Notch1がACTH細胞の分化を抑制し、Notch2がゴナドトロピン(Gn)細胞の分化を遅らせることが報告されている。ヒト下垂体では非機能性腺腫でNOCTH3発現が報告されているものの、機能や増殖への関与は明らかになっていなかった。本研究では、下垂体分化の初期、特にPOMCとProp1/Pit1系譜への分化に重要なNotchシグナル伝達に注目して、ヒト正常下垂体および下垂体腺腫におけるその機能的役割を明らかにするために病理学的な解析を行った。経蝶形骨手術により採取したヒト下垂体腺腫43例(GH産生腺腫9例,ACTH産生腺腫6例,PRL産生腺腫9例,TSH産生腺腫5例,Gn産生腺腫9例,Null Cell腺腫5例)および正常下垂体剖検例3例を20%ホルマリン固定、パラフィン包埋した。レセプター(NOTCH1,NOTCH3)およびリガンド(DLL1,JAGGED1,JAGGED2)について免疫組織化学染色(ABC法)を試行し、その発現と細胞内局在を解析した。正常下垂体においてはNOTCH1がGH細胞の、NOTCH3がACTH細胞の細胞質に陽性であった。また、JAGGED1はGH細胞、JAGGED2はゴナドトロピン細胞およびPRL細胞に陽性であった。一方、下垂体腺腫においては、GH産生腺腫の8割にJAGGED2の細胞膜陽性がみられ、全例でNOTCH3が核に陽性であった。さらに、TSH産生腺腫ではNOTCH1が核に陽性で、全例にJAGGED2が細胞膜に陽性であった。以上より、ヒト下垂体では腺腫化に伴うNOTCHシグナル伝達の充進が考えられた。また、腺腫間でレセプターの核陽性およびリガンドの細胞膜陽性パターンが異なることから、下垂体腺腫の機能分化におけるNOTCHシグナル伝達の関与が強く示唆された。現在、NOTCH核内移行に関連するセクレターゼ、およびNOTCH標的遺伝子の発現についても検討中である。
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