研究課題
アナフィラキシーは、食物やハチ毒、薬物などが原因(アレルゲン)となっておこる急性のアレルギー反応である。蕁麻疹などの皮膚症状のほか、急速に血圧低下や呼吸困難、意識障害などがおこって、生命を脅かすような危険な状態(アナフィラキシー・ショック)に陥ってしまうことがあるので、迅速な診断と治療が必要である。従来、アナフィラキシーは、アレルゲンが抗体の一種であるIgEに結合して、それにより活性化したマスト細胞からヒスタミンが分泌されることでひきおこされると考えられてきた。しかし、IgEやマスト細胞がいない動物でもアナフィラキシーがおこることから、まったく別の仕組みがあるのではと予想されていたが、その実体は不明であった。本年度の研究で、私たちは、IgEとは異なる種類の抗体であるIgGによってもアナフィラキシーがひきおこされ、しかもその場合、アレルゲンの刺激によって活性化するのはマスト細胞ではなく、血液中を流れる好塩基球であることをつきとめた。私たちが独自に樹立した好塩基球除去抗体をマウスに投与することで生体内からあらかじめ好塩基球を取り除いておくと、アナフィラキシーによるショック死を防ぐことができた。好塩基球は、血液中の白血球のわずか0.5%を占めるに過ぎない最少細胞集団であるが、アレルゲンによって活性化すると、ヒスタミンの1,000倍以上の非常に強い活性を有する血小板活性化因子を放出して、アナフィラキシー・ショックをひきおこすことが判明した。すなわち、従来から知られていたマスト細胞・IgE・ヒスタミンが関与するアナフィラキシー発症機構とは全く別に、好塩基球・IgG・血小板活性化因子が主役を演じる新たなアナフィラキシー発症機構が存在することが明らかとなった。
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