1)アゾキシメタン(AOM)投与後に硫酸デキストラン塩(DSS)溶液を反復投与すると生じるマウス大腸がんモデルにおいて、腸局所で産生される腫瘍壊死因子(TNF-α)が、サイクロオキゲナーゼ(COX)-2発現マクロファーを浸潤させることによって、大腸がんの発症過程のみならず進展過程にも密接に関与していることを昨年度報告している。TNF-α自体にはマクロファージに対する遊走活性が無いことから、マクロファージに対する遊走活性を示すケモカインであるCCL2の役割について本年度解析を行った。その結果、CCL2がCOX-2発現マクロファージを腸内に集積させることによって、大腸がんの発症から進展過程に密接に関与していることを明らかにした。 2)マウス腎臓がん細胞株Renca細胞をマウスの尾静脈に接種した時に生じる肺転移巣の形成時において、CCL3・CCL4が肺局所で産生され、これらのケモカインに対するレセプターであるCCR5を発現しているマクロファージ・好中球さらには線維芽細胞が、転移巣の形成とともに集積することを認めた。さらに、CCL3はCCR5依存的にマクロファージの集積を引き起こすのみならず、マトリックスプロテナーゼ(MMP)-9の産生を誘導した。さらに、CCL3はCCR5依存的に線維芽細胞を集積させるとともに、線維芽細胞からの肝細胞増殖因子(HGF)産生も誘導した。CCL3欠損マウスあるいはCCR5欠損マウスに、Renca細胞を同様に尾静脈に接種した時には、マクロファージ・線維芽細胞の肺への集積が軽減されるとともに、MMP-9ならびにHGF発現が低下する結果、肺での転移巣形成が、野生型に比べて減弱することを明らかにした。
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