バーシカンは細胞外マトリックスに存在する巨大なコンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate、CS)プロテオグリカンで、細胞外マトリックスのダイナミズムを司ると考えられている。本研究の目的は、バーシカンのコンディショナルノックアウトマウスとG1-G3ドメインから成るバーシカンV3バリアントのトランスジェニックマウス(V3-Tg)、さらにCS合成酵素遺伝子の強制発現系を駆使して、バーシカンが持つCS鎖の生体内機能を解明することである。平成21年度に挙げた成果を以下に記す。 発生期四肢の間葉系細胞に特異的にバーシカンの発現を欠損するPrxl-Cre/Cspg2<flox/flox>マウスを作製し、野生型との比較解析を通じて同分子の四肢の骨格形成における役割を検討した。同変異マウスは正常に出生するが下肢足指の変形が観察された。組織学的解析から足指の変形の本体は異所性の肥大軟骨細胞結節の形成と関節表面の傾斜であり、これらの変異の原因が軟骨分化の遅延とこれによるInterzone(将来関節を形成する部位)の形成不全によることがわかった。バーシカン欠損による軟骨分化遅延機構を解析する目的でmicromass culture系を用いてシグナル分子やそのリセプターの分布を検討したところ、野生型ではTGF-βが形成中の軟骨結節周囲に局在したのに対し、バーシカン欠損細胞では幅広く分布していた(論文投稿中)。さらに現在、バーシカンによるTGF-βシグナル制御機構を解析中である。
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