食細胞による自己の死細胞の貪食は、単なる死骸の除去だけでなく、自己免疫寛容状態の維持に重要な働きを担っている。我々この死細胞付随抗原に対する免疫寛容誘導現象を応用して、多発性硬化症の動物モデルであるexperimental autoimmune encephalomyelitis(EAE)の発症を阻止できることを示した。そして、脾臓の辺縁帯に局在するマクロファージと樹状細胞が協調してこの死細胞による寛容誘導を司ることを明らかにした。一方、この経静脈的に投与した死細胞による寛容誘導現象とは対照的に、腫瘍死細胞の皮下接種が、抗腫瘍免疫の活性化を誘導し得ることが示されている。我々はこの、死細胞が状況により免疫寛容と活性化という正反対の免疫反応を惹起する機序の解明を目指し、その一環として腫瘍死細胞による抗腫瘍免疫の活性化機構の細胞、分子レベルでのメカニズムの解明を進めた。我々はこれまでに、皮下投与した腫瘍死細胞が、速やかに所属リンパ節に到達し、sinusに局在するマクロファージにより貪食されることをつきとめた。またこのマクロファージには細胞表面マーカーの違いから、複数のサブセットが存在し、その中に強力な抗原提示能を有する細胞群を同定した。さらに、このマクロファージサブセットの抗原提示能やサイトカイン産生能、死細胞貪食能を解析したところ、リンパ節に局在する他のマクロファージや樹状細胞と多くの面で異なることを明らかにした。
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