研究概要 |
GPIアンカーは、真核生物に広く用いられるタンパク質の膜結合様式であるが、特に原虫において多く用いられる。睡眠病トリパノソーマにおいては細胞表面の主要タンパク質がGPIアンカー型タンパク質であり、ツェツェ蝿中腸内で増殖するプロサイクリック型原虫の主要表面タンパク質であるプロサイクリンもGPIアンカー型である。プロサイクリック型原虫のGPIアンカーは、糖鎖にポリラクトサミンの側鎖が結合していること、さらにその側鎖に宿主由来のシアル酸が付加されていることに特徴がある。シアル酸の付加はツェツェ蝿中腸内での原虫の増殖に必須である。トリパノソーマはシアル酸を合成することができないが、トランスシアリダーゼによって宿主成分から転移される。従来トランスシアリダーゼどして1つのタンパク質が同定されていた。我々は、前年度にトランスシアリダーゼ活性を持つ第2のタンパク質TS270bを同定した。今年度は、可溶型にしたTS270bを精製し、その反応特異性を検討した。その結果、TS270bは、第1のトランスシアリダーゼと同じく、alpha2,3シアリルラクトースをシアル酸供与体に用い、alpha2,3結合したシアリル化産物を生成することがわかった。また、トランスシアリダーゼ活性を発現しないプロサイクリック原虫変異株に可溶型TS270bを発現させると、原虫表面にシアル酸が付加されたので、実際に原虫表面のシアル酸化に寄与している酵素であることが確かめられた。
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