研究課題
当該年度はインテグロンシステムにおいてDNA組み換え機構の中心的役割を担うインテグラーゼ(III型)の3次元構造の決定を最終目的とした。最初に、IntI3蛋白の大量精製を試みた。インテグラーゼ遺伝子(intI3)をPCRにて増幅し、蛋白発現用ベクターであるpCold-I vectorに組み込んだ。発現用宿主として、E.coli B834(DE3)、E.coli BL21(DE3)pLysS、E.coli Rossetta2(DE3)の3種を用いた。IPTG添加後に菌体を回収し、SDS-PAGEにて蛋白の発現を確認したが、いずれも可溶化画分に目的蛋白が少なく、大量精製には不向きであった。そこで、大腸菌のシャペロンの1種であるトリガーファクターを可溶化タグとして用いることができるpCold-TF vectorにintI3遺伝子を連結し、新たな発現ベクターを構築した。宿主にはE.coli BL21(DE3)pLysSを用いた。その結果、可溶化画分に大量の目的蛋白を得ることができた。ニッケルカラムにて精製後、FactorXaで切断し、可溶化タグと目的蛋白の分離を試みた。しかし、FactorXa切断後の2つの蛋白成分(可溶化タグと目的蛋白)はゲル濾過やイオン交換クロマトグラフィーで分離することができなかった。また、DTTやアルギニンの添加、バッファー条件の検討等を行ったが、両者を切り離すことができなかった。可溶化タグと目的蛋白の両者の間で強い非特異的相互作用が働いているものと予測された。そこで、可溶化タグを切断せずに結晶化を試みた。濃度5mg/mL及び10mg/mLの蛋白溶液を用意し、市販品のスクリーニングキットを用いて4℃及び20℃にて結晶化を行った。現在、結晶化条件の最適化を行っている。