単純ヘルペスウイルス(HSV)はヘルペスウイルス科のプロトタイプとして基礎研究が推進され、増殖機構についての理解が最も進んでいる。しかし、感染後期におけるウイルス粒子の成熟から細胞外へ放出に至る過程はいまだ不明な点が多い。 HSVが感染すると核骨格蛋白質NuMA(分子量236K)は可溶化し核内分布を著しく変えること、この変化にはリン酸化やポリADPリボシル化が関与していることを示してきた。このような修飾を誘導する宿主酵素としてtankylaseを想定し、この酵素のHSV-1感染細胞における動態について検討した。その結果、HSV感染によってtankylase-1のみかけ上の分子量に大きな変化が生じることがわかった。それは主にリン酸化によるものでErK依存性であることが示された。 テグメント蛋白質の一つUL46はUS3プロテインキナーゼ(PK)の基質であり、リン酸化によって安定化されることをHSV-2感染系において報告した。US3PKはHSV増殖の様々な局面において調節的な役割をもつことが示されており、カプシドの核外輸送にも重要であることが報告されている。HSV-1 US3Δ感染細胞では、HSV-2で見られたような不安定化は明確ではなかったが、US3の欠損はUL46の分布に著しい影響を与えることが判明し、細胞質における粒子成熟にもUS3が関与していることが示された。 我々はUL14がシャペロン機能を有し、感染初期におけるカプシドの核表面への輸送に重要であることを明らかにした。今回、感染後期のUL14の役割について検討した結果、UL14の有無が主要テグメント蛋白質の動態に影響を与えていることを見いだした。U114欠損感染細胞においてはVP16-GFPがアグリゾーム様構造を形成した。
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