研究概要 |
糞便浮遊液中のE型肝炎ウイルス(HEV)野生株(JE03-1760F_wt,遺伝子型3)に比べて,13回の連続継代培養によって得られた馴化HEV(JE03-1760F_p13)は,約14倍感染力価が高くなったことを確認できた。E型劇症肝炎患者から得られた糞便浮遊液を接種することにより,新たに4型HEV(JE02-4970F)株の培養系を確立することができた。JE03-1760F株と同様に,培養上清を用いたcell-freevirusの継代培養が可能であり,5代目の継代培養において,接種後4日目に培養上清中で子ウイルスの出現が確認され,20日目に10^7copies/mlに達した。非劇症株である3型JE03-1760F株に比べてより活発な増殖能を示した。カイコ蛹で発現した組換えHEVキャプシド(ORF2)抗原蛋白質を免疫原として,9株のマウスモノクローナル抗体を作製した。そのうちの1株(H6225)は,immuno-capture PCR法によりHEV粒子との結合能を有していることが示されたことから,培養系を用い,中和活性の有無を検討した。接種材料に予め100μg/mlのH6225抗体を添加し,接種後60日間培養を継続することにより,4.0×10^6 copies/mlのHEVの感染を完全に阻止しうること,さらに10μg/mlのH6225抗体を用いた場合にもHEVの感染成立を大幅に遅延させうることから,H6225は強い中和活性を有することが分かった。また,HEV ORF3蛋白質のC末端に相当する24-mer合成ペプチドを用い10株のマウスモノクローナル抗体を作製した。これら抗HEVモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法により,ORF2抗原は細胞質,とくに小胞体とゴルジ体での局在、ORF3抗原は細胞質および細胞質膜での局在が観察された。
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