腸内抗原が侵入した際の、免疫系活性化と抑制の双方の舵をとっているのは、腸管局所に存在する樹状細胞であると考えられる。しかし、あらゆる外的刺激に応じて腸管樹状細胞がどのようにシグナルを制御しているか、その理解は甚だ不十分である。特に、抑制メカニズムについては殆ど分かっていない。そこで本研究では、消化管における抑制性樹状細胞をin vivoでcharacterizeするとともに、抑制シグナル伝達機構を時空間的制御の観点から明らかにし、炎症性腸疾患との関わりを検討することが目的である。 これまで抑制性樹状細胞は抑制性サイトカインであるIL-10を多量に分泌することが知られている。そこで本年度は、IL-10遺伝子領域に、YFPより明るいmutant蛍光タンパク質をコードするVenusをknock-inしたマウスを作製した。これによりVenusをindicatorとして、組織内での抑制性樹状細胞の局在や挙動をin vivoで観察することが可能となった。 一方、消化管にはIL-17を産生するTH17細胞が多く存在することが知られているが、TH17細胞の分化を強く誘導する樹状細胞集団がCD70を強く発現することを見いだした。さらに、このCD70陽性TH17誘導性樹状細胞は、腸内細菌叢に由来するATPによって活性化し、IL-6やTGF-βを産生することでTH17細胞を強く誘導することも見いだした(論文投稿中)。
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