これまでの解析から、Toll-like receptor (TLR)を介した自然免疫系の活性化が、樹状細胞の成熟誘導を介して、Th1応答を中心とした獲得免疫系の誘導に重要であることが明らかになっている。そこで、実際の個体レベルでの自然免疫系から獲得免疫系への橋渡し機構を、TLRを介した自然免疫系の活性化の消失するマウスに感染モデルを導入し解析した。 トリパノソーマ原虫Trypanosoma cruziを、TLRを介した自然免疫系の活性化の消失するMyD88/TRIF二重欠損マウスに感染させると、感受性が極めて高くなるにもかかわらず、抗原特異的なCD4陽性細胞からのIFN-gamma産生を指標にしたTh1応答は正常に誘導されていることを見出した。また、MyD88/TRIF二重欠損マウス由来の樹状細胞にT. cruziを感染させても、樹状細胞の成熟が正常に誘導された。そこで、MyD88/TRIF二重欠損マウス由来の樹状細胞にT. cruziを感染させて、正常と同様に誘導されてくる遺伝子群をDNAマイクロアレイで解析した。その結果、ある一群の遺伝子群がMyD88/TRIF二重欠損マウス由来の樹状細胞でも、正常に誘導されてくることを見出した。 今後、これら遺伝子群がTLR非依存的に誘導されてくるメカニズムを明らかにするとともに、これら遺伝子群がT. cruzi感染によるTLR非依存的なTh1誘導に関与しているのかを明らかにしていく予定である。
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