研究概要 |
我々は免疫反応誘導活性を持つ免疫組織を人工的に作成することを試み、抗原特異的に正常リンパ節では到達し得ないほどの強い二次免疫反応を誘導できる人工リンパ節の構築に成功した。このような高効率の免疫機能をもった人工リンパ節の構築は世界で初めてである。その高効率の免疫誘導機能の機構を解析したところ、抗原特異的記憶T細胞、および抗原特異的記憶B細胞が人工リンパ節内に濃縮されるという結果が得られた。このことは、人工リンパ節において強い二次免疫反応が急速に引き起こされる理由の一つと考えられた。さらに、人工リンパ節内に高度に集積されてくるCD4+CD44hiCD62LloヘルパーT細胞集団をセルソーターにて分離精製して、(1)マイクロアレイ法による遺伝子発現パターンの解析、(2)FACSによる表面マーカー(ICOS, OX40, CXCR5など)の解析、(3)抗TCR抗体刺激後のサイトカイン産生パターンの解析を行った。その結果、人工リンパ節内に、エフェクター型メモリーT細胞のみならず濾胞性ヘルパーT細胞(Follicular helper T cells)が高度に濃縮されてくることが明確となった。さらに抗原特異的記憶B細胞も高度に濃縮されてくることがわかった。我々の作製した人工リンパ節では、その詳細な機構はまだ不明であるが、抗原特異的な免疫記憶T細胞、記憶B細胞が効率よく濃縮されてくることがわかった。理由の一つとして、我々が用いているストローマ細胞の特性にあると考えている。現在、人工リンパ節に集積するメモリー細胞の機能、発現分子の解析を行い、免疫記憶細胞の本態を明らかにするとともに、より効率よくメモリーTおよびB細胞が濃縮される人工リンパ節の構築を計画している。このような組織を生体に移植することにより、速やかに抗原特異的に二次免疫反応を誘導して病原体を排除出来ることが期待され、今後はヒトに応用出来る人工リンパ節の構築を目指す
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