研究課題
本研究の目的は、パイエル板を覆う領域に存在する特殊に分化した粘膜上皮FAE(follicle-associated epithelium)と、その直下のドーム領域に存在する免疫細胞とのクロストークに立脚した、M細胞の発生・分化と抗原輸送メカニズムを明らかにすることにある。具体的には、CCR6^+CD11c^+B細胞とM-Secの解析をさらに発展させることで、(1)M細胞の発生・分化における免疫担当細胞の役割、ならびに(2)粘膜抗原取り込みにおけるTNTの役割を明らかにする。ケモカイン受容体CCR6の欠損マウスではM細胞数が減少することから、CCR6とそのリガンドでパイエル板上皮(FAE)により産生されるCCL20が、M細胞の分化に重要であることが示唆された。さらに、FAE直下にはCD11c陽性の特殊なCCR6^+B細胞が集積し、この細胞はFAEが産生するケモカインCCL20に対してin vitroで遊走活性を示すこと、また蛍光ラベルしたCD11c^+CCR6^+B細胞をCCR6欠損マウスに細胞移入すると、やはりパイエル板ドーム領域に集積することがわかった。このCD11c^+CCR6^+B細胞をCCR6欠損マウスに細胞移入するとM細胞数が増加することから、CCL20-CCR6の相互作用によりCD11c^+CCR6^+B細胞がFAEと近接することにより、FAEの上皮細胞をM細胞へと分化させることが示唆された。TNTに関しては、パイエル板M細胞間を連結するTNTネットワークが形成されており、TNT上には細菌受容体として機能すると考えられるGP2やPrP^cが局在すること、PrPCと結合するブルセラ菌もTNTに結合することから、TNTは抗原取り込みの効率化に寄与している可能性が示唆された。また、マクロファージ細胞株を用いた研究からは、TNTの形成にアクチン・リモデリングに働く低分子量GTPaseのRalA/Bや、膜輸送の制御因子であるexocyst複合体が関与していることがわかった。
すべて 2008 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
J. Immunol. 180
ページ: 7840-7846
Mucosal Immunol. 1
ページ: 208-218
http://leib.rcai.riken.jp/riken/index.html