1.日本では医師不足が社会問題化しており、その原因として医師の絶対数の不足に加えて、地域間、診療科間の医師数の偏在が原因と考えられている。しかし、医師の分布に関する学術的な報告はほとんどない。市町村別の人口あたり医師数の地域分布を経年的に解析した。臨床医の絶対数は年々増加しているものの、Gini coefficient、Atkinsonindex、Theil indexは2002年以降悪化していた。GISを用いた解析結果では都市部への医師の集中化傾向がみられた。医療機関別に分けて検討すると、偏在傾向は一般病院でより顕著だった。以上の結果を英文論文で発表した。この結果は単純な人口あたり医師数で行ったため、医療ニーズの地域差で補正した医師分布についても同様の検討を行ったまた診療間の差異についても検討した(論文投稿準備中)。 2.日本では医療機関へのフリーアクセスが担保されているため、各医療機関の機能分化・役割分担が十分でないと推測される。このことを検証するため、各医療機関における二次医療・三次医療の混在状況を、医療機関データ、病院情報システムからのデータを用いて解析した。この混在状況は、最近の医療政策にかかわらず、ほとんど変化がないことが明らかになった。さらに二次医療レベル・三次医療レベルに分けて医療機関相互の関係を調べた。大学病院では、二次医療に関して一般病院と相互に影響を及ぼしあっており、Huffモデルがほぼ適合した。一方、三次医療に関しては、他病院の影響が少なかった。以上の結果を英文論文で発表した。 3.前年度に引き続き、包括評価(DPC)が導入された病院において、病院情報システムから抽出した患者基本情報と、DPCに係わる診療情報(様式I情報)から、疾病の種類や重症度など診療情報を関連づけた患者点情報を、GISを用いて解析した。視覚的に病院診療圏を明らかにするとともに、病病連携・病診連携の状態を地理的に解析した。本年度はさらに、マルコフ連鎖モンテカルロ法とベイズ推定を取り入れた階層的空間ポワソン回帰モデルを用いて解析した(論文投稿準備中)。
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