研究課題
基盤研究(B)
私達はこれまでに2種の新しい作用機序を有する神経保護薬を開発してきた。カルモデュリン阻害剤DY-9760eとプロテインキナーゼB活性化薬VO(OPT)は脳虚血に伴う神経細胞死を抑制した。しかし、これらの化合物の神経血管保護作用のメカニズムは不明である。私達はDY-9760eとその活性代謝物DY-9836がカルシウム/カルモデュリン依存性一酸化窒素合成酵素(NOS)を阻害することを見出した。本研究ではフェニレフリン誘導肥大心筋細胞を用いて、eNOSによる障害性スーパーオキシド産生機構と、DY-9836によるスーパーオキシド産生抑制の機序について検討した。フェニレフリン誘導肥大心筋細胞におけるスーパーオキシドの産生はeNOSのアンカップリングにより起こることが明らかとなった。eNOSのアンカップリングによる持続的なスーパーオキシドの産生は心筋細胞のアポトーシスを誘導した。DY-9836の心筋保護効果はeNOSによるスーパーオキシドの産生抑制と相関した。さらにeNOSの足場蛋白質として機能しているcaveolin-3/dystrophinの分解もDY-9836は抑制した。脳においても同様に、脳虚血後の血管内皮細胞におけるスーパーオキシドの産生をDY-9836は抑制した。従って、DY-9760e/DY9836によるスーパーオキシド産生抑制作用は神経血管保護作用において極めて重要である。海馬顆粒細胞下層(SGZ)における神経新生は学習や記憶形成に重要である。私達はPI3キナーゼ/AktとERKの活性化薬[VO(OPT)]が虚血後の神経新生を促進できるのか検討した。VO(OPT)の腹腔内投与は脳虚血後のSGZにおける神経新生を促進した。PI3キナーゼ/AktとERKの阻害剤であるwortmanninとU-0126は各々の活性を抑制する濃度で、VO(OPT)によるSGZにおける神経新生を完全に抑制した。さらに、VO(OPT)による神経新生促進効果は脳虚血に伴う認知機能障害の改善効果と良く相関した。本研究によりVO(OPT)はPI3キナーゼ/AktとERKの活性化反応を介して神経新生を促進すること、AktとERKによる神経新生促進は脳虚血に伴う認知機能障害の改善に重要であることが明らかとなった。
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