研究概要 |
1.ATL細胞の表面抗原を標的とした抗体療法に加えて,ATL細胞に対し特異的に増殖抑制や細胞死を誘導する,新規低分子化合物の探索を行った。その結果,TNBAAと呼ばれる新規化合物が,ATL細胞特異的に強い増殖抑制効果を示すことを見出した。また,本薬剤はATL細胞に対し,細胞周期をG2期で停止させることが分かった。 2.昨年度に報告した,ハイブリドーマ由来のモノクロナール抗体A19-5が認識する抗原を同定した。A19-5はHLA-DRα分子状のペプタイドと糖鎖の両者によって形成される特有の抗原構造を認識していると思われ,また,HLA-DRα分子を介してATL細胞を凝集させることも分かった。従って,この分子はATLにおいては腫瘍細胞の臓器浸潤などと関連する可能性もあり,あらたな病態解明の糸口になる可能性がある。 3.ATL表面糖鎖の解析に有用な,新しい蛍光性リンカー(f-monoと命名)を開発することに成功した。f-monoは蛍光性を有するので,従来の固定化リンカーを用いた時に比べて千分の1量の微量糖鎖に対して適応でき,MS/MSによる糖鎖の構造解析が可能であり,かつ非特異吸着をほとんど無視できる糖鎖チップを作成できるようになった。 4.ATL腫瘍糖鎖抗原に対する抗体を単離するため,ヒト抗体の安定なフレームとして報告されているハーセプチン(抗Her2ヒト抗体)の,Fv領域の遺伝子のCDR領域にランダム変異を導入した単鎖Fv抗体遺伝子を作製し,これをファージライブラリ化することに成功した。現在,このライブラリを使った糖鎖抗原に対する特異抗体の単離を進めている。
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