研究課題
基盤研究(B)
【目的】生体内には正常(全長)のタンパク質やペプチド以外に数多くの崩壊ペプチド断片が存在することが知られるようになった(peptidome)。生体内のプロテアーゼの作用により一つの親タンパク質から複数の断片が産生されうる。peptidomeは血液・体液を構成する分子グループの新規概念である。健常人の血中においてもおびただしい崩壊ペプチド断片が観察され、またその出現パターンは個人によって異なる。このpeptidomeが病態に応じて特徴的な出現パターンを示すこと(特願2006-169359、特願2008-000776)より病態の早期予知診断に役立てること目的とした。解析対象として、炎症あるいは播種性血管内凝固症候群、多臓器不全症の状態、悪性疾患、炎症性免疫疾患を候補として選択し、それぞれの疾患の血清を用いて包括的なペプチド断片の定量と同定を行い、本研究の成果としてこれらの重症病態の病態把握・栄養サポート戦略・薬物治療戦略に寄与する診断法を開発することを目的とした。癌、炎症性免疫疾患の各病態を網羅するペプチド断片データベースを作成することを目的としてディファレンシャル解析(分子量2-20kDa)を実施し、新規診断システムを用いた診断基準の確立を目指した。その結果、食道癌、膵癌および慢性炎症性疾患として歯周病の解析において得られた感度・特異度の高いバイオマーカー候補ペプチドに対して診断マーカーとしての有用性と新規分子としての創薬ターゲットとしての側面から研究を遂行した。(1)対象疾患の病態とバイオマーカー候補ペプチドとの関連についてペプチドの生成機序を含めて、さらに検討を加えた。培養細胞を酵素処理して得られるペプチドフラグメントと生体内組織液中に存在する同一のペプチドフラグメントの有無を検討した。(2)慢性炎症性疾患のバイオマーカー候補ペプチドに生理活性を認める可能性のあるデータについて検討した。(3)診断バイオマーカー候補ペプチドの疾患の経過における変化について検討した。(4)バイオマーカー候補ペプチドに対する生体内での抗体産生の可能性について検討した。生体内に存在するペプチドフラグメント(peptidome)の新規の概念に対する論考を進めた。peptidomeは健康であればあるほど豊かで複雑さに満ちたデータの織り成しとして現れる。「病気」の時はあるデータが強調されて「豊かな複雑さ」は影を潜めてしまう。本研究は「病態の追求」とは対極的な「健康値を追求」する検査医学に発展する可能性を示した。
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