研究概要 |
前年に引き続いて、1-ブロモプロパン(1BP)曝露に対する3つの近交系マウスC57BL/6J,DBA/2J,BALB/cAの感受性を比較した。肝臓の壊死領域はBALB/cA>C57BL/6J>DBA/2Jの順に大きかった。50ppmの1BPによって精巣上体精子数、運動率が減少し、頭部形態異常精子率が、どの系統でも有意に増加しており、以前のラット実験に比べると、マウスがラットよりも、雄性生殖毒性、肝臓毒性に関し感受性が高いことも明らかとなった。さらに、1-ブロモプロパンの肝臓毒性における作用機序を明らかにするために、転写因子Nrf2ノックアウトマウス(KOマウス)を用いて実験を行い、酸化ストレスの関与を明ちかにした。Nrf2-ノックアウトマウスおよび野生型C57BL/6Jjマウスを1-ブロモプロパンに0、100、300ppm、一日8時間週7日4週間吸入曝露を行った後、断頭採血し肝臓を剖出、凍結保存を行った。KOマウスは、野生型マウスに比べ、同じ曝露濃度で、有意に肝臓壊死領域が大きかった。また、KOマウスでは脂質過酸化の指標であるマロンジアルデヒド、GSSG/GSH比が高く、総グルタチオン量が低かった。グルタチオンS-トランスフェラーゼの元々のレベルそして、増加率が、KOマウスで野生型に比べて低かった。KOマウスで、抗酸化酵素の発現が低く、MDAが高かっことから、1-ブロモプロパン肝臓毒性に酸化ストレスが関与していることが明らかになった。本研究により、感受性にNrf2および、Nrf2関連遺伝子が関与していることがわかり、酸化ストレスが毒性作用機序として働いていることが示唆された。1-ブロモプロパン毒性作用機序と関連したバイオマーカー候補として、酸化ストレス関連遺伝子の検索をさらにすすめる必要がある。
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