研究概要 |
本研究は、食品由来物質の発がん抑制メカニズムを発がんに至る各段階において総合的に解明し、効果的で安全な発がん予防法を開発することを最終目的として行っている。トマト由来リコペンを中心として、緑茶カテキン、ビタミンC、ビタミンE、バニリン、シナモン、大豆抽出物などの食品由来物質を選び、1.突然変異抑制機構の解明、2.細胞内シグナル伝達への影響、3.DNA修復および発がん関連遺伝子発現への影響、4.エピジェネティクスへの影響、5,細胞増殖への影響評価の5つの目的について研究を進めている。 当該年度においては、目的1および5について、リコペンやビタミンEはヒト皮膚由来細胞内における紫外線誘発突然変異およびアポトーシスを効果的に抑制する結果を得た。またリコペンについては、目的3において、ミスマッチ修復関連遺伝子群の発現を効果的に上昇し、また発がん抑制遺伝子であるP53の発現も上昇している結果を得た。さらに、ゲノムの不安定性の指標であるMicrosatellite Instability(MSI)への影響を調べたところ、数種のマーカーにおいて、MSIを効果的に抑制している結果を得た。 上述の結果により、トマト由来リコペンは発がん予防において重要な役割を果たすと考えられる。今後、リコペンを中心として、目的4のエピジェネティクスへの影響評価を行うとともに、確立された実験方法を用いて他の食品由来物質の影響評価も行い、安全で効果的な発がん予防法の開発を目指す。
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