平成21年度では、これまで検討した各食品由来物質中で最も強力に自然発生突然変異を抑制したトマト由来リコペンによる抑制機構をより詳細に解明するため、まず、各種ミスマッチ修復異常大腸癌由来細胞を用いて検討した。その結果、リコペンは、1塩基のミスペアの認識に関与するhMSH6、deletionやinsertionの認識に関与しているhMSH3、さらにそのどちらにも関与しているhMSH2のすべてに異常のあるLOVO細胞、hMSH3およびエラーの認識後の修復に関与しているhMLH1に異常があり、そのためhMLH1と複合体を形成するhPMS2もタンパクレベルで発現できないHCT116細胞、hMSH6のみに異常があるDLD-1細胞の順に、各細胞内の自然発生突然変率を抑制した。また、各ミスマッチ修復関連遺伝子の発現への影響を、リアルタイムPCR法により解析した結果、主にエラーの認識に関与しているミスマッチ修復遺伝子がup-regulateされている結果を得た。以上の結果より、トマト由来リコペンは、ミスマッチ修復に影響を及ぼすことで突然変異を抑制し、発がん抑制に効果を示すことが示唆された。さらに、同様の系を用い、ブドウ由来レスベラトロールやミカン由来β-クリプトキサンチンにも自然発生突然変異抑制効果があることを見出した。現在メチル化への影響を中心に、抑制機構の解明を計画に基づいて実行している。
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