【内耳性難聴の解析】 1) 本年度に聴性脳幹反応(ABR)測定できる機器が新たに一式そろった。これを利用して、遺伝子改変マウスの聴力を測定した。 2) 標的遺伝子のホモ型ノックインマウス(loss of function)では、先天性難聴の表現型があることを見つけた。さらに、ノックインマウスでは内耳のラセン神経節細胞の数が野生型マウスに比較して有意に少ないことを発見した。減少の原因として、神経細胞のアポトーシスの可能性を考え、タネル法等の検討を行ったが、神経細胞にはアポトーシスの所見を見つけることはできなかった。そこで、透過型電子顕微鏡を施行したところ、細胞変性の所見を見つけた。以上より、本遺伝子の重度の活性低下は、内耳ラセン神経節細胞のアポトーシスを伴わない細胞変性を誘導し、先天性難聴を誘発する可能性を示した。 3) 標的遺伝子のヘテロ型ノックインマウスでは、加齢生難聴の表現型があることを見つけた。さらに、野生型マウスに比較してヘテロ型ノックインマウスでは内耳のラセン神経節細胞の数が加齢とともに有意に減少していくことを発見した。以上より、本遺伝子の軽度の活性低下は、加齢とともにおこる内耳ラセン神経節細胞の細胞減少を加速し、加齢性難聴を誘発する可能性がある。 【騒音性難聴の解析】 1) 現在予備的検討の段階であるが、標的遺伝子のヘテロ型ノックインマウスでは、騒音に関する感受性が高い可能性がある。現在、騒音の大きさと時間を変えながらさらに詳細に検討している。 2) 標的遺伝子のトランスジェニックマウス(gain of function)では、騒音に対して抵抗性を示した。今後、分子標的療法により、騒音性難聴に対する予防・治療法を探って行く予定である。
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