研究目的 : メラノサイト/メラニン制御分子がどのようなメカニズムで内耳性難聴の発症や病態に影響を与えるのかをモデル動物を用いて分子レベルで解析する。さらに、騒音が、どのようなメカニズムでメラノサイト/メラニン制御分子の機能を修飾し、難聴を誘発するかを解明する。 研究成果 : 10種類以上の遺伝子改変マウスおよびヒトを対象として、①先天性難聴、②加齢性難聴、③騒音性難聴の病態に関与する種々の分子を発見し、一部、予防・治療法の開発に成功した。 ①先天性難聴 : ヒトおよび遺伝子改変マウスにて、先天性難聴の原因となる分子について機序解析を進めている。1つの分子については、全く新規の先天性難聴制御遺伝子であることをヒトおよび遺伝子改変マウスで証明することに成功し、現在、論文投稿中である。 ②加齢性難聴 : 遺伝子改変マウスを用いて、加齢性難聴を制御する新規加齢性難聴制御分子について、研究を進めている。1つの分子については、細胞内シグナル伝達の側面から発症機構を明らかにし、現在、ほぼ論文が完成しているので、近日中に投稿予定である。現時点では、この分子がヒトの加齢性難聴を制御しているかどうかについては明らかになっていないので、今後の課題である。別のもう1つの分子については、これを標的とした薬物による加齢性難聴の予防に成功し、特許を申請した。今後、標的分子が加齢性難聴を誘発する機構を明らかにし、薬物の作用機構をより鮮明にしてから、論文投稿する予定である。 ③騒音性難聴 : 内耳における発現を高めることにより、騒音性難聴に対する抵抗性を亢進できる分子を2種類発見した。現在、これらの分子を標的とした騒音性難聴予防療法の開発を進めている。
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