研究概要 |
初年度は,動物および細胞での試料収集と解析方法の確立,重金属耐性細胞の樹立を中心に実験した。 Cdについては,すでに確立しているメタロチオネイン(MT)欠損Cd耐性細胞に加え,MTが発現している細胞からCd耐性細胞を確立している。また,MT欠損Cd耐性細胞においてZn輸送体のひとつであるZIP8のmRNAレベルが低下している原因に,エピジェネティックな調節機構が関与している可能性を考え,5-aza-cytidineの添加によってmRNAレベルが回復することを見出した。これは,Cdへの長期曝露がDNAメチル化を介して細胞へのCd取り込みを抑制している可能性を示唆している。動物実験では,Cdに長期曝露したマウスの腎臓中での遺伝子発現プロファイルを検討した。一方,Cdの急性毒性を軽減する要因を検討する過程で,Coの同時投与が顕著な抑制効果を示すことを見出し,その機構の解析を開始した。 Asについては,メチル化As(III)化合物の細胞毒性を抑制する因子がヒト尿中に存在する可能性を見出し,NMR,LC-MSなどのオミクスの手法を活用して,有効成分の同定を目指している。尿のNMR解析については,これまであまり活用されてこなかったマウスの尿をNMRで解析する際に,pHの変動が大きく,そのためにクエン酸の化学シフトが大きく変化することを見出し,報告した。一方,砒素製剤の副作用として心毒性が問題になっているので,心臓,および肝臓由来の細胞におけるAs毒性の感受性の差を調べた結果,明らかに心臓のほうが感受性が高いこと,および,グルタチオン代謝の差が関与している可能性を見出した。現在,臓器特異的なAsに対する感受性の差を規定する要因を検討中である。
|