研究課題
重金属の毒性と輸送機構を明らかにするために、細胞レベル、および動物レベルでDNA microarrayを活用して下記の検討を行った。1.Cd耐性細胞で発現が変化している遺伝子の検索、2.Cd長期投与マウスと腎臓における遺伝子発現の変化、3.低濃度の亜ヒ酸に長期暴露した肥満細胞における遺伝子発現の変化、などを行った。その結果、Cd耐性細胞を用いた研究により、Cd輸送に関与する遺伝子としてZn輸送体であるZIP8を見出すことに成功した。さらに、ZIP8の遺伝子であるSLC39a8の転写がCd耐性細胞で抑制されている原因として、DNAメチル化が関与していることを見出し、環境汚染物質によるエピジェネティックな遺伝子発現変化の例として報告することができた。また、動物実験においてCdへの長期曝露により、腎臓の近位尿細管においてglutathione S-transferase A1が特異的に発現上昇することを見出した。一方、亜ヒ酸に曝露した肥満細胞における遺伝子発現解析の結果から、免疫応答に関与するS100タンパク質の1種であるS100A8/A9が顕著に発現上昇することを見出した。これらのほとんどの研究成果は、OMICSの手法を活用することによって網羅的な解析を行うことで初めて見出すことができた。一方、遺伝子発現の変化のみならず、尿中の低分子量物質をCE-TOF-MSで網羅的に測定するメタボロミクス解析を活用することにより、現在注目されているメチル3価ヒ素の毒性軽減に関与する可能性のある因子を同定することができた。以上のように、トランスクリプトーム解析、エピジェネティクス解析、メタボロミクス解析などのOMICSの手法を活用することで重金属の毒性と輸送に関与する様々な未知の因子を見出すことができた。今後、これらの因子の生理学的、毒性学的意義を解析していく予定である。
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